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コラム

COLUMN
商標

事業展開と商標出願

USPTO(米国特許商標庁)認定商標弁護士のMr. Mike Kondoudis(マイク・コンドウディス氏)が3月21日ツイッターにて、日本の富士通株式会社(以下「富士通」)が、USPTOに暗号資産(仮想通貨)関連の商標を出願したようだ、と報告しました。
富士通は、第36類に「暗号資産の管理,暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換,暗号資産の売買又は他の暗号資産との交換の媒介・取次ぎ又は代理」の指定役務を含む「FUJITSU(ロゴ)」を出願しました(シリアル番号97842910)。
富士通が国内はもとよりグローバルに推し進めているWeb3プラットフォーム(注)の新サービスの提供に関連し、新しい事業展開を視野に入れての出願と考えられます。米国への出願に先立ち日本でも第36類に出願をし(2023年2月14日)、この日本の出願をベースとしてパリ条約の優先権主張を利用しての出願としています。
(注)Web3とは、ブロックチェーンを基盤とした分散型のインターネットとして新たに提唱された考え方
 
富士通は日本で第36類において既に「FUJITSU(ロゴ)」の登録商標を複数保有していて、暗号資産関連の指定役務が含まれる類似群コード36A01も、権利範囲としてカバーしていますが、暗号資産関連の指定役務が明確に記載・指定されている登録は存在していません。
ご存知の通り、米国の商標は使用主義を採用していて、原則として使用実績がないと登録・維持できませんが、出願方法の選択により、日本の出願をベースとして出願をし、その後日本での登録が認められれば本国登録ベース(この場合は日本の登録))による出願として、使用実績なしでも登録可能となります。ただし、この場合には本国登録の指定役務に米国出願の指定役務が明示的に含まれていなければなりません。そのため、米国での暗号資産関連での「FUJITSU(ロゴ)」の使用実績がない現時点では、暗号資産関連の指定役務を明示した日本の出願をベースとして米国に出願する方法が最適であるとして日本での新たな出願を行ったものと推察できます。
 
商標は、事業と直結している知的財産です。
事業展開の方向性、プレスリリースや公開のタイミング、サービスあるいは製品の提供時期、提供を計画している国や地域等々を検討し、事業展開に遅れないように出願手続き等を行うべきでしょう。