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コラム

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知財戦略

特許は質が高ければ件数は重要でない?

ちょっと前になりますが、マネースクエアHDと外為オンラインとの間で特許係争がありました。両者がそれぞれの顧客に提供している、FX取引の自動化ツールの発明に係る特許の係争です。最終的に特許権侵害を訴えたマネースクエアHDの勝訴が確定し、外為オンラインに対する、特許権を侵害している自動化ツールの提供差止が認められました。
 
この一連の特許係争、いわゆるFinTech分野のビジネスモデル特許の係争であったり、一審では敗訴したマネースクエアHDが二審の知財高裁で逆転勝訴を勝ち取ったり(裁判が続いている間に裁判所のビジネスモデル特許に対する評価が変わったようにも思えます)、マネースクエアHDが巧みな特許戦略を進めていたり、となかなか注目すべき点が多いのですが、ここではマネースクエアHDの特許戦略に注目したいと思います。
 
マネースクエアHDの公開された特許出願件数は、2022年9月の段階で93件あります。FX取引の自動化ツールという限られた技術分野の特許出願ですから、かなり多いです。ただし、93件全てが新規出願というわけではなく、新規出願は13件で残りは分割出願です。係争があった影響もあるでしょうが、分割出願を繰り返して特許ポートフォリオの厚みを増しています。
 
それに対し、外為オンラインの公開された特許出願件数は、2022年9月の段階で16件です。特許は数ではないという意見もありますが、係争になれば相手方も全力で無効資料を探したり、権利の穴を突いたりしてきますから、権利はいくらでも欲しいという状況になります。
 
この両者の特許係争も、最終的には特許ポートフォリオが厚いマネースクエアHDの勝利に終わりました。もちろん、特許は数だけでなく質も重要です。しかし、コンペティターを牽制したり、係争を勝ち抜くには件数も含めた特許ポートフォリオの厚みが物を言うことがこの係争からもよくわかります。